敷地は世田谷区の高台の住宅街に位置する。
かつての大きな区画から細分化された細長い敷地に、住居とギャラリーを組み合わせた、定年後の夫婦の居場所を計画した。
ギャラリーという公共性を持つ空間を住宅に内包させながらも、その空間が公共性を保ち、区画の細分化により失われた外部空間のような、言わば都市の余白空間となり得る事を期待して設計を進めた。
単純な家型の建物の一端を、斜めに切り取るようににして設けられた、細く、大きな三角形の開口から、その余白空間とも呼ぶべきギャラリーが外部へと顔を出す。
本来細長い空間という意味を持つギャラリーを、その細長さを強調するべく、南北10mという、敷地の全長に近い奥行きを持たせ、また敷地形状により平面的に、わずかに広がりを持つ位置に配し、間口を 750mmから1800mm に変化させ、その両端に開口を設ける事により、内外の連続性を増幅させている。
また、各居室を確保しながらわずかに傾いた隔壁により、断面方向への上昇感も加えられ、通常、住宅が持ち得ない特異な空間となる事を意図した。
内窓と外窓の重なりが創り出す、室内からこぼれた光のゆらぎが、周辺環境と融和する事、 そしてギャラリーが、その語源である“教会の入り口”になぞらえて、人々が何かを求めてこの場に集まるような、いわゆる終の住処でありながらも、同時に老後の趣味という枠を超え、再度自立を促すような空間になる事を願っている。